トイの青空
《第一章》 崩壊 ─02─
トイの部屋は、お世辞にも綺麗とは言えない場所だ。
だから「汚ねえ部屋だな」と一瞥されても何も言い返すこともできなかった。
なにせ手洗い場は外で共有だし、シャワー室は狭いし、小さなキッチンは錆び付いているのだ。そして奥にある部屋には育児院から貰った捨てる予定だった小さなテーブルと椅子が二つ、そしてシングルベッドが一つ置かれているだけだ。
「働いてんのかお前」
背後に立つ青年の気配が圧倒的過ぎて、冷や汗が額に滲む。顔を上げることができない。それ以前に声を出すことすらもままならない。
この一年間、朝の光のように穏やかな世界に片足を突っ込み、鬱々とした環境とはかけ離れた場所にいたせいで恐怖が倍増してしまっていた。
「住んでるっつーことは金がいるだろ。このテーブルも。元からあったもんじゃねえんだろ」
こつん、と青年が拳で叩いたテーブルは古くて至る所に傷がついている代物だが、この小汚い部屋には不釣り合いな装飾が施され、しっかりとした木でできたアンティーク用のテーブルだ。
それに彼は目ざとく気づいていたらしい。
「売ってんのか」
何を、とは言わなくともそれぐらいわかる。
青年は高級感のある黒いジャケットのポケットから小さな箱を取り出し、再び煙草を咥えて火をつけるとくるりとトイに向き直ってきた。
1年前とは違う、随分とラフな格好だった。
「それ以外、稼ぎようもねえだろお前」
煙を吐き出しながら上から下まで、淡々とした視線がトイの体の上を這い回る。
思い出すことでさえ苦痛を伴う煙草の香りに眩暈がしそうだ。
服を着ているというのに素肌を晒されている気分になって、具合の悪さがどんどんと増していく。
明確に否定しようと口を開いたが、やはり声は出なかった。視線も地面に向かってしまう。ただただ体と心が重い。
何でこんなところにいるんだ、とか。何で今更トイの前に現れたんだ、とか。言いたいことは沢山あるのに何も言えない。
ましてや今すぐにでも出て行って欲しいなんてこと、言えるはずもなかった。
「おい」
答えないトイに焦れたのか、つかつかと迫ってきた青年に胸ぐらを掴まれ上を向かされる。
身長差があるためかかとが浮いた。至近距離に迫って来た小綺麗な男の顔に、思い出したくもない記憶がフラッシュバックして息が苦しくなった。
揺さぶられ、穿たれ、酷使されて傷ついた体にさらさらと落ちてくる金色の髪や汗が、剥き出しになっている傷に触れて痛かった。
「答えろ、ブン殴られてえのか」
「売って、ない……」
宣言通りのことを、この男はする。
トイはそのことを、身をもって体験している。
「体は売って、ない……」
絞り出した声に青年は鋭い目を気だるげに細めた後、掴んでいた指を緩めくっと口角を釣り上げた。
嘲笑とも違う、値踏みするようなそれはトイの苦手な笑い方だった。仏頂面で、滅多に表情を変えないこの男がこういった表情を浮かべる時は、大抵恐ろしいことしか起こらない。
「喋れるんじゃねえか」
煙草を咥えながら、男は器用に片頬を上げせせら嗤った。
「もう声が出ねえんじゃねえかと思ってたぜ。あの時も、最後の方は声帯ぶっ壊れてたみてえだしな」
あの時、という台詞に下を向く。溜まった唾を必死に飲み込んで思い出さないようにしたくとも、目の前の金色の髪と青の瞳はそれを許してくれない。
この男は残酷な4人の男のうちの一人にしか過ぎなかったはずなのに、こんなにもまだ、身体も心も彼を恐れている。
「完璧に壊れたと思ったんだけどな。生きてたとは、元気じゃねえか」
トイを壊した男たちの中でも、この男はむしろドライな方だった。殊更トイに執着心を抱いているようにも見えなかった。共に過ごした──と言えば語弊があるが、一つの屋敷で共有されていたのは1年と数か月だったが、むしろ他の3人のほうがトイの体や心を壊すために嬉々として色々なことをしていた。
目の前にいる男は、虫の居所が悪い時や溜まった欲求を発散する時はトイを組み敷いたが、それ以外ではてんでトイには無関心だった。
仲間に煽られ気が乗った時だけゲームのような狂乱に参加して愉しんでいる風でもあったし、他の3人と同様にトイへのいたぶり方は容赦なかったものの、酒や煙草の肴程度、という態度は始終崩さなかった。
そんな男だったので、まさかトイを探しに来たのが他でもなく彼だとは思いもしなかった。
最後の日、そろそろ反応もねえし飽きたな、とつまらなさそうに呟きいち抜けたのもこの男だった。この冷たくて綺麗な男……ソンリェンだけ。
「トイ」
くいっと顎を持ち上げられる。こんな風にソンリェンに名前を呼ばれたことは、あの屋敷にいた頃は一度たりともなかった。
いつもおいとかてめえとかお前とか、物のように呼ばれていた。
いや実際物だった。溜まった時だけ突っ込んで吐き出して処理をするための穴、そこにあるから利用する玩具、ソンリェンにとってトイはそんな存在だったはずだ。必要以上の会話をすることもなかった。
それなのに、壊して遺棄し、今ではもう存在すらも忘れられているであろうトイを見つけたのが、どうしてソンリェンだったのか。
「脱げ」
端的な命令に、青ざめる。
まだ短くなっていない煙草を勝手にテーブルに擦り付け、ソンリェンは火を消した。
ソンリェンの瞳は1年前と同じように相変わらず冷え冷えとしている。
久しぶりの血が下がっていく感覚に身震いし、瞬時に後ずさる。が、腰を捕らえられて引きずり戻される。
「な、んで」
「溜まってんだよ」
「やっ……」
どうやら向かう先は、テーブルの側に横たえられている小さなベッドのようだった。
「手間とらせんな。飼い主様が直々に会いに来てやったんだ、使わせろ」
「やだ、やっ……はな、せ」
あのベッドは育児院から譲ってもらった、トイが疲れた体を癒すために静かに眠る、やっと手に入れた安住の地だ。そんな所でなんて絶対にしたくない。トイはもう自由なのだ。
けれどもソンリェンは相変わらず話を聞いてくれない男だった。ぐんっと両手首を片手で捕らえられ強くベッドに叩きつけられてしまった。
衝撃に胸が痛んだが、なおも逃げようと足掻けばソンリェンに舌打ちをされ、華奢な両足に足を乗せられ動きを封じられる。
二人分の人間の重みでベッドが軋む。もとよりトイの体は実年齢よりも幼く見え、細身ではあるが20歳を過ぎているソンリェンとは体格差があるためまともな抵抗すらできずにさっさとズボンをずり下げられる。
隙間から突っ込まれた指の冷たさに臀部が震えた。
「ひゃっ……ぁ、あッ、」
「玩具風情が、逆らってんじゃねえ」
ずぐり、と下着の隙間から勢いをつけて指が挿入された場所は、トイの女性としての部分だった。
トイは、男性としての性と女性としての性の両方を持っている身体だ。
中性的な顔立ちの癖に喉仏はある。華奢ではあるが女性のようにふくよかな体でもなく、棒のようだ。下半身には男性器と女性器があり胸の膨らみはそこまでない。異常な体だという自覚はあった。だからこそ、ソンリェンを含む4人の男たちに目を付けられ囲われ、格好の遊び道具にされていたのだ。
彼らにとってトイは人間ではなかった。それは捨てられた今でも。
「や、だ、あ、そっち、はいや、だ……!」
「黙れ、俺がどこの穴使おうがてめえに関係ねえだろ」
「く……ぁあ」
「濡れてねえな」
「や、いた、ぁ、痛い、ん、く」
久しぶりに感じる裂けるような痛みに喉が喘ぐ。じたばたと暴れるが四肢を押さえつけられているため、腰を浮かせれば浮かせるほど指を迎え入れることになってしまってさらに痛みが増した。
せめて慣らすためのものあればなんとか悲鳴は堪えることもできるのに、膣内の浅い所も、深いところも、ぐりぐりと擦られ苦痛を噛み殺すこともできない。
内部をまさぐってくるソンリェンの指の動きは明らかに検分だった。
太い親指も挿入されて入口も中もぐぷぐぷと角度を変えて四方に押し開かれ、具合を確かめられる。今の状態でどこまですることができるかという風に……ぞっと背筋が戦慄いた。
「客取ってねえってのは本当らしいな、この狭さじゃ……少なくとも最近は、だがな」
「いっ、そ、そんりぇ……痛っ、く、ぅ」
「うるせえ、まだ調べ終わってねーんだよ」
どうでもいいことのように吐き捨てられる。もちろん指は引き抜かれず、それどころか本数は増えていくばかりだ。
痛くて苦しいのに、1年前に長い間酷使され形も変わってしまっていた膣壁は、ゆっくりと内部を掻き回す異物に合わせてゆっくりと広がっていった。まるで異物を迎え入れるように。
「ぁ……、ふあ」
「まあ、突っ込んじまえば広がるな」
そのまま奥まで突き破られてしまいそうな恐怖にガタガタと歯が震えた。
「おいトイ」
「んあ、ひ、あ」
久方ぶりの明確な恐怖にあっと言う間に半狂乱に陥ってしまったトイは、ずくりと奥まで指を突き入れられ声もなくしなった。胎内に響く鋭い痛みと衝撃に身体が縮こまる。
「か……ふ」
「本当にお前、誰ともやってねえんだな」
「や、も、や、ぁ」
「嫌じゃねえ答えろ。じゃねえとこのまま突き破るぞ」
どこを、とは言われていないがソンリェンが指を突き入れている場所に違いないなかった。
そういえばトイが壊されたあの日も、ソンリェンに同じことを言われた気がする。
そろそろ皆が飽きてきた頃に、つまんねえから声を出せと揺さぶってくるソンリェンに命じられたが、叩きつけられ続ける衝撃の嵐にほぼ気を失っていたトイは掠れた空気しか絞り出すことしかできなくて、その結果実行されたのだ。
今までで初めてと言ってもいいほどの奥を串刺しにされて血が出た。あれがはっきりと覚えている記憶の最後だった。その後は全ての世界がぼやけていた。
眼のふちに涙が溜まっていく。歯を食いしばって、トイはこくこくと頷いた。
「本当か」
「して、ない……誰とも、本当に」
言いながら、また頷く。
ソンリェンは必死の形相のトイにゆるりと笑みを浮かべた。見たことのない笑みだった。
「そうか。じゃあ……濡らしてやる」
一瞬、柔らかく伏せられた睫毛に驚いた。そして解放された手首にも。
「え、あ……っ」
呆けていると、ずちゅんと勢いよく指を引き抜かれた。
内壁ごと引きずり出されるような痛みと感覚にびくびくと身をよじっている間に、完全にズボンと下着を全て脱がされてしまった。
ベッドの下に乱雑に放り投げられたそれらが視界の端で弧を描く。
空気に晒された下半身が冷たくて、直ぐに脚を閉じようとしたのだが足首を捕えられそれも叶わなくなる。そして、眼前に広げられた光景に目を見開いた。
「ぇ……」
文字通り固まってしまった。
今更、剥き出しの下半身を舐め回すように見られた所で羞恥なんてものは感じない。そんな感情を覚える暇もなく、いつも恐怖と苦痛と喪失感と絶望感に苛まれていたからだ。
だが今トイが感じているのはそれらの感情とは全く違うものだった。しいて言うなれば純粋な驚き、だ。
トイの股の間に、ソンリェンが顔を埋めようとしていたものだから。
「……ぁっ!?」
萎えた幼い男性器をくいと上にずらされ、現れた低い双丘に赤い舌が伸ばされる。
「ひっ……」
つう、と皮膚をなぞる湿った感覚にびくりと腰が跳ねるが、押さえつけられる。割れ目を下ってきた舌が乾いた膣のふちをぬるりと舐め回し、そのままにゅるりと内部に入ってくるところまではっきりと見てしまった。
嘘だろうと腰を引いて足を閉じようとするが、体重を乗せられさらに深く頭を埋められてしまった。
「ッき、汚っ……」
あまりの光景に呆け、しかし与えられる粘つく感覚のリアルさにさらに混乱した。他でもない彼にこんなことをされたのは監禁されていた間一度たりともなかった。
挿れやすいようにと指で適当に解されることはあっても、直接舐められるなんて初めての経験だ。
ただただ慄く。しかもトイはまだシャワーすらも浴びてないというのに。
「ひ、ゃぁ、ゔあ……!」
トイの蜜口に唇全体で吸い付き、舌で味わいすするソンリェンが信じられない。
ぺちゃぺちゃととんでもない所から零れる濡れた音に、たまらず自由な両手でソンリェンの金色の頭を掴んでしまったが、煩わしそうに振り払われた。
「そ、そんりぇ……」
弱弱しく抵抗を続けようとするトイにいい加減面倒になったのか、一瞬だけ空色の瞳に睨みつけられた。
首を振って拒絶を示す。殴られるのは恐ろしいが、あのソンリェンにこんなことをされるのも同じくらい恐ろしい。
突然歯を立てられて肉を噛み千切られてしまうのではないかと、あり得なくもない恐怖にふるふると震える。怯えるトイに、ソンリェンの唇が僅かに離れた。
「閉じるな。股開いてろ」
「や、ゃ、やだ……ひ」
「うるせえな、よくしてやってんだろ」
「や、めッ、きもち、わりぃっ……!」
「あ?」
す、と青色の瞳が光を失った。失言だったと気づいた時には既に遅かった。大きな手のひらにがっと口を鷲掴まれギリギリと力を込められる。
「調子に乗るなよ、てめえ」
吐息一つ分だけ離れた距離。冷えた瞳に射抜かれて言葉を失った。
「いいか、俺を拒んでみろ。ここに入れンのはそこにあるナイフだ」
膣の入り口付近に爪を立てられ、鋭い痛みに視界が滲んだ。
見たくなんてないのに、ソンリェンが顎でしゃくった先のテーブルに置かれたナイフに目がいってしまう。今朝仕舞い忘れていたトイのナイフだ。
「ズタズタにされてえか」
心も体も芯から凍えてしまい、もはや首を動かすことも出来なかった。
ソンリェンはガチガチに硬直したトイにチッと舌打ちし、髪を乱雑にかきあげた。
「大人しくしてろ」
再び顔を埋められ、ぬめった舌が這わされる。ぎゅっと目を瞑り、濡らされる感覚に耐える。
「ん、……く、ふ」
ソンリェンは、他人に自ら触れたがるような男ではない。許可なくこちらから触れてしまったら青筋を浮かべて怒るような人間だった。かなり潔癖の部類に入るだろう。
だからこそそれ専用の玩具でめちゃくちゃにされたことはあったが、こんな風に自らトイの下半身にむしゃぶりついてくるなどあり得なかった。
遊ばれて様々体液塗れになったトイを使用する際、ソンリェンは盛大に顔を顰めてはトイを蹴飛ばし必ずシャワーを浴びせ汚れを落とさせた。
適当に洗えば汚えんだよと罵られ乱暴にされるので、トイはソンリェンを相手にする時は必死に中を洗い、皮がむけるまで肌を擦っていた。
する時だって、彼は必要以上に服を脱いだりもしなかった。
一度に全員の相手をさせられる時だって、初めの一回以外は絶対と言っていいほど避妊具を着用していた。
理由は、誰かが突っ込んだ穴は汚いから。
『おい、てめえら誰か挿れたか』
『え?ああ、まだだよー』
『うわっでたよ、潔癖ソンリェン』
『って、またつけるんですか?それ』
『最初はつけねえよ……おい、何寝こけてんだ、さっさとベッド行ってうつ伏せんなれ』
『でもねえ、こっちもそういうの用意されると気分下がっちゃうんですよ』
『あっソンリェン!次使うの俺ねー』
『てめえらの汚ねえ汁まみれの穴なんかに突っ込みたくねえんだよ』
『酷いこと言うなよソンリェン、俺らが病気持ちみたいじゃねーかよ』
『散々中出した後の穴もさ、しっとりしてて案外いいもんだよお』
『ごめんだな』
『これの本来の良さを知らねえなんて可哀想だなお前、3周目ぐらいからかなり具合よくなんだぜ?』
『だよねえ、俺らのザーメンと愛液が混ざって生暖かくてとろっとろで……一度あれ経験すると生でしかできなくなるのにさあ、もったいないよね』
『うるっせえな、集中できねえだろうが黙れ……おい、触んなっつってんだろうが』
甦る記憶は、確か朝だった。
4人とも誰かの部屋に集まっていた。前の日もかなり酷使されて疲れ果てていて、視界も思考も朧気だった。
トイの体を散々弄んだ後、ボードゲームやチェスなどに興じていた彼らにシャワーを浴びる許可を貰い、ふらふらになりながら体を洗い気絶するようにカーペットの上に倒れこんだ。
ベッドに運んでくれる人間などいるはずもなく、そこで一晩を明かした。
一服終えて部屋に戻ってきたソンリェンは、朝だったこともあってか反応していた。処理をしようと思ったのだろう、床で丸まっていたトイはソンリェンの足で起こされベッドの上に投げ飛ばされた。
その時、不安定な体につい自分からソンリェンの袖を掴んでしまったことが彼の怒りを買ってしまった原因だった。
許可なく触られたことで一気に機嫌が悪くなったソンリェンに頬を張り飛ばされ、次に意識を取り戻せたのはうつ伏せにされて背後から激しく出し入れされている最中だった。
男たちに徹底的に壊されたあの日だって、トイはこれまで以上に酷い有様になっていた。
もう立ち上がることも動くこともできなくて、さすがのソンリェンもトイのあまりの有様に端正な顔を少しだけ歪ませていたし、嬉々としていたぶっていた他の3人も最後は汚らしい姿になったトイに気持ち悪さが先だったのか、誰も触れようとしなかった。
あの瞬間、トイに対する彼らの執着や性欲は全て無くなったはずだ。
トイはあの日彼らに全てを壊され、捨てられ、死んで、自由になったのに。それなのにどうして今更、こんなことになっているのか。
「ぁ……ん、ん」
恐ろしい、怖い、嫌だ。
心の底からそう思っていても、長くしつこい調教の末僅かな快楽を与えられただけでも反応するようになってしまった身体は正直だ。
しつこい愛撫によって少しだけ蜜を滲ませ始めたそこを、長い指先で押し広げられさらに丹念に舌を這わせられれば自然と腰がくねってしまう。
じゅるりと溢れた体液を音を立てて吸われ、びくんと腰が跳ねる。波のように襲いくるざわざわとした悦楽に、つま先で何度もシーツを蹴ってしまう。
快感を拾い喘ぎ始めたトイの姿に気を良くしたのか、ソンリェンの舌使いはさらに激しくなった。
「あ、あ、ぁあ、は」
ふにゃりと垂れたままのトイの幼い男性器にも、細い指は伸びてきた。ゆったりと巻き付いてくる冷たい接触に腰が引けそうになったがソンリェンの拒むなという厳しい命令を思い出して耐える。
「っ、ぅ……」
肉の棒の先端を押し上げるように摘ままれる。太い親指に皮の隙間からはみ出た桃色の肉を円を描くように弄られ、割れ目を押し潰され、焼け付くような痛苦に唇を噛みしめた。
「いっ、いたい、いた」
にちにちと緩く先端部分を弄ってきた親指の動きが、どんどんと激しくなる。
器用に輪にした指で下から上まで扱かれて、先端を包みこんでいる皮を引きずり下ろすかのようにねっもりとそれを繰り返される。
もちろん、蜜口も舌でいたぶられながら。
膣内と男芯を同時に弄られて、交互に襲いくる激痛と腰が疼く快感に脂汗がひっきりなしに溢れてくる。
この責め苦にはいつまで経っても慣れない。
1年前と同じく足指を丸め、シーツに爪を立てることで衝撃を緩和しようとするも、それすらもままならなる。
激しく乱れる自分の呼吸が、脳にガンガンと響いて煩かった。
「ん、い……ぃや、だ、そん、そんりぇ……くぁぁ……ん」
「痛えくせによがってんじゃねえよ、淫乱」
嘲るような含み笑いの後、ソンリェンが次に取った行動にまたもや目を疑った。あろうことかソンリェンの蠢く舌は割れ目を離れ、緩く起ち上がったトイの肉欲にまでたどり着いたのだ。
「ッ……!?」
ねっとりと細い根本に舌を這わせられ、信じられない面持ちでソンリェンにいたぶられる自身の男性器を凝視した。
「小せえなほんとに。これでしっかり男の機能持ってんだから笑えるな」
「な、な……や」
咥えさせられたことは数え切れないぐらいあったが、ソンリェンにしゃぶられたことは一度もなかった。
「静かにしてろ、噛みちぎられたくなきゃな」
「噛っ……」
怖ろしい言葉を証明するかのように、根本にゆるく歯を立てられる。
歯が舌への愛撫に変わり、剥き出しの先端部分を吸い付かれたところで噛み千切られるかもしれないという恐怖から解放された。
しかし今度は熱い刺激が剥き出しの神経にダイレクトに響いてしまい腰がくねるのを止められない。
「ひ……あ、ぁ」
赤く湿った舌から、焼け付くような熱が伝わってくる。
「きっ、きた、な、あっ」
トイのか細い悲鳴にソンリェンはほくそ笑み、さらに深く咥えこんできた。びくんと腰が跳ねる。
トイの幼い男性器は、ソンリェンの口の中にすっぽり収まってしまった。