
トイの青空
《第一章》 崩壊 ─03─
「……ッあぁ、う」
ねっとりと、絞り取るように全体をしゃぶられ、その淫らな蠢きにガクガクと腰がずり上がるが直ぐに引きずり戻される。
「ぁ ああ あ、あ、ぁ」
もごもごと咀嚼するように蠢くソンリェンの頬が信じられない。
先端から、じわじわと液体が溢れだしているのが自分でもわかる。容赦なく厚い舌で先端部分の割れ目を刺激され、腰に溜まった快感が波のように荒れ目の前が白く濁ってきた。
そのため、ずくりと膣内に指を挿入されたことにも気づかなかった。
「ぅう、あ、ぁっ、あ……そんり、ぇ、や、ぁ……っ」
じくじくと胎内を穿り回してくる動きと合わせられると、咥えられているそれが圧倒的な熱を持ち始めて苦しかった。ぐずぐずと音を立てて腰の奥から溶けていくような錯覚に陥る。
逃れたい一心で腰を回しても、ソンリェンの舌は逃さないとばかりに絡みついてきてもっと擦れて痒くなる。
激しい水音はどんどんと増すばかりで歯の震えが止まらない。喘ぐことしか発散方法がなかった。
口を覆っている手のひらも、もう意味などなしていない、指の隙間から全部漏れてしまう。
「そんりぇ、ひ、あ」
ひと際大きな水音を立てて吸い付かれて、自分の性器が壊れたかと思った。
「あ、ああ、……ぁああ、アアあッ……」
熱を押さえつけるように暴れる体を固定される。
久々に与えられた強制的な解放感は凄まじく、視界が白く爆発し、トイは腰を高くつき出して達した。
「ッ──ふ」
じゅうっと最後の一滴まで吸いつくされて、ひくんひくんと細い肢体が伸び切り徐々に弛緩していった。
呆けるような痺れに思考も体力も根こそぎ奪われ、ぺたりとシーツに全体重が吸い込まれてゆく。
「は、はぁ、あ……」
十数秒ほど、トイは自分の掠れた吐息の音だけを聞いていた。黄ばんだ天井すらもぼんやりとしていてソンリェンを伺う余裕なんてものはなかった。
だからトイの吐き出したものをソンリェンが全て嚥下したことに気づいた時、ざっと青ざめた。
「は、くそまじいもん飲ませやがって」
そう言いながらも、口に含んだもの味わうように喉を鳴らし、挙げ句の果てにはペロリと唇を舐めてみせたソンリェンの姿をトイは信じられない面持ちで見上げた。
「ぁ……」
「主人の許可なく一人で勝手にいってんじゃねえよ」
トイの脳裏を過ったのは、ソンリェンとの恐ろしい思い出だ。
誰に犯される時でも、トイが相手の許可なく勝手に射精することは許されてはいなかった。出していいと許可を得てからじゃないと厳しいお仕置きが待っている。
相手の機嫌がいい時は堪えきれず出してしまっても許される日もあったが、あの時のソンリェンは私生活で何かあったのだろうか機嫌はかなり最悪だった。
天井から吊り下げられ、二人の男に挟まれる形で後ろと前の穴を同時に貫かれている最中だった。
前の男がトイの中に射精し終わったのでソンリェンが入れ替わりに挿入してきたのだが、それまで胸にも男性器にも散々刺激を与えられ続けしかも後ろでは前立腺をめちゃくちゃに掻き回されていたトイはもう限界だった。
過ぎる快楽は苦痛でしかない。熱くて痛くて出したくて、身体中が爆発してしまいそうで。でも許して貰えなくて、もう狂ってしまいそうで。
あろうことかソンリェンに挿れられたその衝撃で、絶頂を迎えてしまったのだ。
綺麗な顔にかけてしまった白濁液を、ソンリェンは表情もなく無言で拭った。周囲も彼がキレたということを察し重苦しい空気になっていき、トイはとんでもないことをしてしまったと震えていた。
その後のことはもう思い出そうとすると霞みがかかる。覚えているけれども思い出したくない。
彼は他の3人に比べてトイに対しても冷たかった。だからこそとても無情で鬼畜だった。他の人とは違う非情さがあった。
「ごめんなさい」と謝罪する暇さえ与えられなかった。他の3人が呆れたようにそろそろ止めたら?と声をかけたのも、後にも先にもあれが最後だ。
「ご、ご、め……」
今のソンリェンは、あの時のような絶対零度の雰囲気はまとってはいなかったが、トイは彼が恐かった。
汚らしい他者の体液を飲み下したというのに顔色一つ変えないソンリェンが、いつどの瞬間怒りを爆発させるのかがわからないからだ。
唇を拭い、指についた白い体液をじっと見つめている仕草さえも恐ろしい。ところが。
「……飲めるもんだな」
ソンリェンは淡々と呟いただけで、トイに手を上げたりはしてこなかった。
「味は、最悪だけどな」
また、ぽつりとソンリェンが呟く。何かを考え込んでいるような表情に見えた。
どこか様子がおかしい。張り詰めた糸のような緊張感の中、トイはソンリェンから離れるために静かにシーツをずり上がるが、突然向けられた鋭い視線に動きが止まる。
逸らされないソンリェンの青い瞳。トイの方から声をかけることはできなかった。
数秒か、数分か。ふいにソンリェンの手がゆっくりと伸びてきた。頬にそれが触れるか触れないかの所で反射的に体が震える。ぴたりと、ソンリェンの手が止まる。
至近距離で、ソンリェンが吐き捨てるように笑った。渇いた笑みだった。
「は、くだらねえ」
「っ、ィ」
ぐんと前髪を引っ張られる。薄っすらと目を開いた先に、ソンリェンの細められた瞳があった。
「勝手に出しやがった仕置だ。やるぞ」
いつのまにかズボンの前をはだけさせていたソンリェンに両脚を再び押し開かれ、ぴたりと膣口にそそり勃つ切っ先を添えられる。1年ぶりの他人の熱だ。
「い、やだァっ……!」
「暴れんな」
片手で両手首を捕らえられシーツに叩きつけられる。悲鳴を上げる暇すら与えて貰えなかった。
肉の塊が激しい水音を立てて侵入してくる。周囲の肉を巻き添えにしながら一気に奥まで。
「──ぁ、うは」
久方ぶりの絶望は酷く簡単に、つまみ食いするような軽さでトイの膣を貫いた。
「っんだよ、せめえな」
苛立ったように舌打ちされる。ただでさえソンリェンの雄は美麗な顔に似合わず太くて長いのだからトイの狭い膣道が広がらないのは当たり前だ。
現に、奥まで挿入されたというのにまだ全て収まり切っていないのだ。
鈍痛のような痛みが繋がった所から広がっていき、ぎちぎちと今にも張り裂けてしまいそうな内壁に腰が慄いた。
「く、ぁ」
息が詰まる。肺から空気が押し出されまともに息も吸えない。
「逃げてんじゃねえよ。どうだ、1年ぶりの味は」
「あ、は、はぁ、あ……ぐ」
一つにまとめられていた手が左右のシーツに押し付けられる。薄い電気の明りのせいで、覆いかぶさってくるソンリェンの顔がよく見えた。
少しシワのよった眉間、彼も狭いトイの内部に苦しい思いをしているのだろうか。
「玩具は黙って足開いて突っ込まれてりゃいいんだよ」
「ん……や、ぁ、くあ」
「動くぞ」
耳元で低く囁かれ、久方ぶりの悪夢が始まった。
隙間から零れる粘着質な音を楽しむように腰を突き入れられ、引かれ、ゆっくりと挿入されてはまた抜かれる。緩急をつけてねっとりと、執拗に、時には素早く、ソンリェンが気持ちよくなるためだけの穴として使用される。
泣きたくなんかないのに、自然と涙が溢れて止まらかった。
「あ、あ、あ、ぁ、あ」
ずるりと内肉を巻き込んでソンリェンの杭が押し入れられ引き抜かれるたび、他の臓腑までもが引きずり出されるような感覚にぞっとする。快楽はまだほど遠い。
時折包み込む肉の感触を味わうようにねっとりと腰を回されると粘着質な音が増して絞られるような痛みにトイは唸った。
トイの荒い吐息と、ばちゅんばちゅんと空気と肉の弾ける音だけが薄暗い部屋に響き渡る。
「いた、い、た……痛、い」
「何が痛いだ、絡みついてくるくせに」
「や、ゃ、ら、や」
「もっと緩めろ、動きづれえ」
「む、り……むり、できな、苦し、」
「聞こえなかったのか? 緩めろ」
ソンリェンは緩んだ穴は好きじゃない。けれどもきつすぎるのも好きじゃない。ぴりと凍った空気にトイは歯を食いしばって下半身の力を抜くように努力した。
しかしやはり痛くて、穿たれるたびに絶えず力が入ってしまう。
どうしようと戦々恐々としていれば無理矢理肉を裂くように奥を抉られて、その拍子に仰け反った喉ぼとけに強く歯を立てられる。
「ひ、ぐ」
貫かれている所も噛み付かれた喉も、極限まで開かされた股も手首も、全て痛い。
「あ、あ、ふぁっ、痛い、は、ん、ん……」
乱暴に揺さぶられ続ける視界の中、自分の上で上下に揺れる金色の髪をぼうっと見上げる。
開かされた両足が動きに合わせてぶらぶらと宙を蹴る。抵抗するなという命令がトイの全てを凍り付かせていた。それに、かなり気分が悪かった。がんがんと奥をえぐられるたび酷い嘔吐感がこみ上げてくる。
今朝からまともに食事をとっていなかったことに今更ながら感謝した。そうじゃなければ吐いていただろう。
今はただ、好みのリズムで、角度で、トイの中で暴れまわるソンリェンを受け入れることしかできない。
苦しかった。叫びだしたかった、逃げ出したかった。涙で滲んだ視界で揺れる世界を見上げる。
ここは決して治安がいいとは言えない場所だ。けれどもトイの家だった。
一人死にかけていたトイを拾ってくれたシスターの傍で、確かに育児院を訪れて、子どもたちの相手をしていろいろなことを手伝って、お金を貰ってここで生活していたのに。
やっと安寧を手に入れられたと思っていたのに、どうして自分はまたこんな風に犯されているのだろう。
「な、んで……も、トイ、に、あき……ぁうっ」
一度ギリギリまで引き抜かれ、横向きにされた。
片足を抱え上げられ再び押し込められ、ソンリェンの熱く太い異物が全てトイの中に納まってしまった。
その状態で奥をめちゃくちゃに掻き回される。目に入ってきたテーブルも大きく上下して見えるほどの律動に泣く。
ぶちゅぶちゅと激しい水音を立てながら突かれるたび、体が、心が揺れる。
「ぁ、あ、あきたって、言っ……くあ、あ」
1年と数か月間いたぶり尽くされた結末は、スラム街の端にあるごみ捨て場だった。
正確には戻ってきたというべきだろうか、屋敷に連れていかれる前はそことは別の路上で生活していたのだから。
4人が、そろそろ飽きたから新しい玩具を飼おうと決めた。だからトイは捨てられた。
ただ、新しい玩具を飼う前にどうせ捨てるのだから最後に飽いたトイで思い切り遊ぼうとありとあらゆることされて、壊された。
彼らはトイの命が尽きても別に構わなかったのだろう、トイの身体をめちゃくちゃにした。
息も絶え絶えなトイの惨状に少しは哀れまれたのか、全裸のトイは屋敷の執事に毛布で包まれ汚らしい街の路地裏に打ち捨てられた。
雨の日だった。汚物塗れで、傷つけられた体は出血していて、病院を探す気力も体力もない。金もない、学もない、世界を知らない、体を弄ばれることしか知らない、そして唐突に知らない路上に捨てられた子どもが生きていけるわけがなかった。
それに毛布も雨でぐしゃぐしゃに濡れて、どんどん体温も無くなっていって。孤児の子どもが路上で死ぬことなどありふれた日常だ。
生ゴミの饐えた臭いの中で、確かにトイはあのまま死ぬはずだった。
通りかかったシスターに、助けて貰わなければ。
「うるせえ」
「あ、あっ、や、ああアっ……」
「たかが共有物が、ガタガタ言ってんじゃねえ。飽きてねえからヤってんだろーが」
「ん、んん、んく、ふ」
散々擦られた入口は熱を持ったように熱い。極限まで広がった膣の入り口が削り取られていくような気さえする。
もしかしたら切れているのかもしれないが、あまりにも激しい律動にぐるぐる動く視界のせいで確認のしようがなかった。
濡れた音色が増すたびに圧迫感もます。
どんどんと膨張していく男の熱を引き攣れる内部いっぱいに感じた。最後はきっとこのまま弾けるのだろうかとこれまで通りの現実に思い当って、トイの意識は僅かに浮上した。
「ぁ、あ、なか……なか、出さない、で」
震える手で、腰をひっつかんで揺さぶっているソンリェンの手のひらを弱弱しく掴む。
「あ?」
一気に機嫌が急降下したソンリェンに怯えるが、それだけはどうしても嫌だった。
セックスというものがなんたるかは、あの屋敷で4人の男たちに身体で教え込まれたがそれ以上のことは深く理解していなかった。
けれども育児院で生活していく上で女性の身体のこともシスターから教えて貰った。生理というものがまだ来ていなくとも、はいらん、というのが起こっていれば赤ん坊ができる危険性があるのだと。
トイは相変わらず男とも女ともつかない身体だが、声変わりはしていて棒のような身体にも女性らしい柔らかさはない。
だから確率は低いかもしれないが、妊娠してしまうかもしれない。もし仮にソンリェンとの間に望まぬ命ができてしまえばきっと殺せと命じられるだろう。それではあまりにも可哀想だ。
それにもしも産むことになったとしても育てられない。自分と同じスラム街の孤児にはさせたくなかった。こんな惨めな存在はトイ一人で十分だ。
「……ぁ、中は……ダメ、お願、い……だから、だめ、や」
「は、こんなもんぶらさげといていっちょまえに女のつもりか、お前」
「あッ、ゃ、はっ……ふぁっ、は、ん、あ……」
手持無沙汰のように萎えた男性器を扱かれ、シーツに頭を押し付けて押し寄せる熱に耐える。
こんな風にソンリェンにそれを弄られたこともなかった。挿れて擦って吐き出す穴ごときにソンリェンは興が乗った時以外愛撫なんて施さない。
だからいつも通り離してくれることを願っていたのだが、ソンリェンは何を考えているのか腰を穿つリズムに合わせて本格的にトイの男性器をも扱き始めた。
「ひ、やあ、ぁ ああ あ」
「……どこに出そうが俺の勝手なんだよ」
騎乗位を強要される時、腹に当たって目障りだから自分で押さえてろと冷たく命じられることもあったというのに。どうして今日はこんなに、執拗に。
「や、ダメ、だっ、ァ、ア」
「妊娠なんてするわきゃねーだろ、お前みたいなこっち擦られただけで濡らすような半端な体が」
「ん、ふ……ん、ぁあ、ああ」
一度吐き出させられた上、膣をえぐられる痛みで硬くすらなっていなかった肉欲だったが、大きな手のひらで包み込まれ緩急をつけて刺激されれば直ぐに快感を拾ってしまう。
本当は無理矢理与えられる快感も激痛もどちらも嫌だ。けれども痛みよりも快楽の方がまだましだ。
何日も何日も気が狂うほどの快楽を与えられた時は逆に痛みが欲しくてたまらなくなったけれども、やっぱり痛いのはとても、苦しい。
「そうだろ、トイ」
「ぁああ、ぁ ああ あ」
「お前は玩具で、穴で、共有物で」
ぐるんと中に入れられたまま向きを変えられて、再び正面から深く挿入される。
「ぁああっ……」
トイの薄い腹がソンリェンの動きに合わせてぐんと波打ち、圧迫感がさらに重くなる。
身体が折れてしまうほどの勢いで早くなっていく律動と、男としての急所をめちゃくちゃにされて、もう何も考えられなくなった。
耳に響く激しく濡れた音は酷使されている膣から聞こえてくる。ソンリェンの言った通りだ、男芯を刺激されて女性器が濡れている。おかしな体だ、男でもなく女でもない、そして男であって女でもある。どっちつかずのくせに男性に搾取されるだけのこの惨めで歪な身体。
もう、腰を揺さぶられているのか自ら迎え入れるために腰を振っているのかもわからなくなる。まともな言葉を発することさえ、できなくて。
「俺の、もンなんだよ」
「ひぁ、あん、あ、あ──ッあ……あぁ」
覆いかぶさってきた大きな体にごちゅごちゅと、最奥を追いうちのように潰されてさらに目の奥が弾ける。
犯されている胎内がいいのか擦られている男芯がいいのかも判断がつかない。開きっぱなしの口からは涎が零れて。もう自分がどこにいるのかさえわからなくなる。
「出せよ、許可してやる」
ぬるりと耳たぶを舐められながら、吐息ごと呪いの言葉を吐き捨てられて、視界が弾けた。
「い、ぁあ、あ、あ、ッ、ァ──、」
自分の力では抑えきれないどろどろとした大きな波が腹の奥から噴き出す。
今までにないほど至近距離からじっと見降ろされていることを気にする余裕もなく、背を丸めながら腰をガクガクと痙攣させて悶絶し、白濁液を撒き散らかした。
同時にベッドが大きくグラインドするほど深く突き上げられて、隙間なくぴっちりと収まりきったソンリェンの肉棒が中でびくびくと痙攣したのがわかった。
ダイレクトに冷たい飛沫が叩きつけられる不快感。いっそ破れてしまうと思うほど、勢いよく中に吐精されている。
「あ、ぁあ あ、ンぁあ、ァン……」
このまま関節が外れてしまうのではと怯えるほど脚を限界まで押し開かれ、ぐん、ぐんとゆるく腰を出し入れされ最後の一滴すら残さず注ぎ込まれた。
「あ、っ、ぁ……」
「あー、くそ……」
イく寸前のソンリェンの熱い吐息が耳朶に吹き込まれる。
吐き出しながら吐き出された。トイの方が絶頂ははやく終わった。しかし射精の余韻に浸ることはできなかった。まだソンリェンのものが激しく脈動していたのだ。
全部吐き出されるまでの時間が、これまでとは比べものにならないほどに長かった。
「ん、んん、ん、ぁ……っ、……」
長い長い時間をかけて、放出が終わった。じんわりと広がる冷たい感覚にぶるりと臀部が震える。
全て出し切ったソンリェンは、ふ、と一息ついて強張っていた体をゆったりと弛緩させた。のしかかって来た体は重く、ふわりと煙草の臭いがきつくなる。
余韻に浸っているからとはいえ、ソンリェンに抱きしめられていることが信じられなかった。
驚くほど近くにあるソンリェンの長い睫毛が、薄い光に照らされて光っている。女性的で綺麗な顔だけれどもその服の下にはしっかりとした筋肉がついていて、多少細いが成人男性の身体つきをしているのだ。
トイとは違い汗ひとつかいていないようだけれども。
そんなどうでもいいことをぼんやりと考えてしまっているのは、嵐のように犯されてしまったことがどこか現実味がなく、今でも信じられなかったからだ。
無防備な体を開かされてもトイの思考を占めていたのは、今トイに無体を働いた目の前の青年のことではなく、別のことばかりだった。
また、汚い体に戻ってしまった、とか。
明日も仕事があるのに、こんな体で子どもたちと遊ぶのはいやだ、とか。
子どもたちに触れたら、子どもたちが汚れてしまう、とか。
シスターに会いたい、でもこんな体じゃ会えない、とか。
やっぱり育児院に住んでなくてよかった、とか。
今日が雨で何も食べられなくてよかった、吐いたらもっと酷いことされてた、とか。
──結局、トイはいつまでたっても玩具のままなんだ、とか。
「おい、何呆けてんだ」
「ぁ……、」
「別のこと考える暇があるとは余裕だな、まだ終わりじゃねえぞ」
勢いよく引き抜かれ、ぽっかりと栓を失った衝撃にびくびくと痙攣している間に腕を引かれて無理矢理起き上がらせられる。
「うつ伏せんなって尻上げろ」
トイが行動をとる前に頭をシーツに押さえ込まされた。少しでいいから休む時間がほしいのに、それすらも与えてくれない。しかも今度は正面ではなく後ろから。
尻をぱんと強く叩かれる。懐かしすぎる忌々しい合図に、次にソンリェンが使おうとしているのがどちらの穴か直ぐに理解してしまった。
「言ったろ、溜まってんだよ」
手持無沙汰なのかもう一度叩かれる。三度目はないだろう。トイは力が入らず言うことを聞かない両手両足を叱咤し、ソンリェンが使いやすいようにのろりと尻を高く上げた。
苦痛に耐えるためシーツが破れんばかりに強く握りしめて挿入の時を待つ。逃げることも抵抗することもできないのならば、耐えるしかないのだ。これまでと同じように。
震えながらも命令に従ったトイに、どうしてソンリェンが短く舌打ちしたのかはわからなかった。